今回は、企業への応募の第一歩となるエントリーシート(ES)が「いつ、どのような場面で利用されるのか?」について紹介していきます。
学生の皆さんは、「エントリーシートは書類選考の判断材料として利用される」と考えている方が多いと思います。これは間違いではありません。しかし、それ以外の場面でエントリーシートが利用されるケースも沢山あります。就活を有利に進めるためにも、エントリーシートが利用される場面をよく把握しておいてください。
書類選考の基礎となるエントリーシート
エントリーシートは、応募してきた学生を書類選考するときの判断材料として利用されるのが基本です。「志望動機」や「自己PR」、「学生時代に取り組んだこと」などを参考に、採用したい学生を選抜していくのがエントリーシートの本来の役割です。もちろん、このような目的でエントリーシートを利用している企業も沢山あるでしょう。
しかし、学歴フィルターを中心に書類選考を行っている企業からすると、エントリーシートは大学名を確認するだけの存在でしかありません。それ以外の質問項目は選考材料にはなりません。だって、文章が読まれることはないのですから。
このように書くと、「エントリーシートは適当に書いても構わない」と思う学生もいるでしょう。でも、それは大きな間違いです。エントリーシートは書類選考のときだけでなく様々な場面で利用されます。
学歴フィルターのボーダーラインに幅がある場合も
学歴フィルターで書類選考を行っている企業であっても、状況によってはエントリーシートが重要な判断材料になる場合があります。それはボーダーラインに「一定の幅」を設けている場合です。
学歴フィルターは大学名だけを頼りに合否を決定するものです。しかし、「△△大学以上は合格」、「▼▼大学以下は不合格」といった具合に二者択一的に学生を振り分けていないケースもあります。
たとえば、
- 「明らかに偏差値が高い大学」はエントリーシートの内容に関係なく合格
- 「明らかに偏差値が低い大学」はエントリーシートの内容に関係なく不合格
- 「偏差値が高いとも低いともいえない大学」のみ、エントリーシートの内容で合否を決める
という感じでグループを3つに分けて選考している企業もあります。こうすることでエントリーシートを読む枚数を大幅に減らすことができます。ボーダーライン上にいる学生はエントリーシートの内容をよく読み、それ以外の学生は「大学名」だけで機械的に処理していく、という選考方法です。「大学名だけで決めている訳ではない」という言い訳にも使えるでしょう。
このような選考方法の場合、ボーダーライン上にいる学生にとっては、エントリーシートの内容が極めて重要になることは言うまでもありません。エントリーシートの内容が「次のステップへ進めるか否か?」を決める貴重な判断材料になります。よって、適当にエントリーシートを書いてよい訳がありません。
もちろん、ボーダーラインの位置や幅は企業によって異なるため、「自分がボーダーライン上にいるか?」を明確に知ることはできません。でも、過去の採用実績校などをみれば、ある程度は予測を付けられると思います。
面接資料としても活用されるエントリーシート
学歴フィルターがあり、「明らかに偏差値が高い大学」に通っている学生は、エントリーシートを適当に書いても書類選考を通過できるケースが多いと思われます。これでは「真剣に書いても意味がない」と考える学生もいるでしょう。
しかし、このような考え方には大きな落とし穴があることを覚えておいてください。書類選考や筆記試験を無事に通過し、面接に進んだときに、提出済みのエントリーシートが初めて読まれるケースもあります。要は、エントリーシートを面接の事前資料にしているのです。
何百人もの学生を相手にする面接官は、「毎回、同じ質問ばかりを繰り返しても芸がない」と考えるのが普通です。そこで、エントリーシートに書かれている内容を面接の直前に読み、その内容に沿って質問をするケースが多くあります。学生の経歴に合わせて質問をすることで、同じ質問の繰り返しを避け、「面接をより有意義なものにしたい」と考える面接官は少なくありません。
このとき、エントリーシートに書かれている内容が陳腐であった場合、悪い印象を持たれたまま面接が始まることになります。当然、採点結果にも悪影響を及ぼします。逆に、エントリーシートが興味深い内容であれば、「聴き甲斐のある学生」として好印象を持ってくれるかもしれません。
このように、面接の事前資料としてエントリーシートが使われるケースは少なくありません。そのほか、面接後に合否判断の会議を行う際に、エントリーシートが見直されるケースもあります。「書類選考で落とされることはないだろう」と高をくくってエントリーシートを記述すると、後で痛い目に合う可能性があります。学歴フィルターがある場合であっても、エントリーシートは真面目に記入しなければいけません。
一度も読まれない、悲しいエントリーシート
唯一、エントリーシートを適当に書いても問題がないのは、学歴フィルターがあり、大学名が明らかにボーダーラインを下回っている場合だけです。この場合、エントリーシートが読まれることは一度もなく、そのまま破棄される運命にあります。
何の選考もないまま落とされるのは理不尽で仕方がありませんが、どんなに頑張ってエントリーシートを記述しても、読まれる機会がなければ意味がありません。
社会に出るということは、このような理不尽を受け入れ、自分の立ち位置を冷静に見極めながら行動していくことでもあります。その一方で、「こんな制度、ぶち壊してやる」という思いを秘めながら行動していくことも大切です。ただ、新卒の就職活動に関していえば、今から革命を起こそうと一念発起しても、自分の就職には間に合いません。5年後、いや10年後に就活を控えた学生のためにも、現在の気持ちを忘れないようにしてください。
次回は、「エントリーシートの志望動機には、何を、どのように書くべきか?」について検討していきます。