de empleo

就職活動における人事部と学生

エントリー数の増加は企業にとって本当に喜ぶべき状況なのか?

人事部に喝のイメージ

前回の記事では、行く気もない企業に保険として応募する「余計なエントリー」について紹介しました。通常、こういった応募は迷惑以外の何物でもありません。しかし、状況によっては「誰でもいいから、とにかく応募して欲しい」と考える企業(人事部)もあります。

そこで今回は、「エントリー数の増加は企業にとって本当に喜ぶべき状況なのか?」について解説していきたいと思います。

 

応募者が増えると人事部の評価は高くなる!?

以前の記事でも紹介したように、人事部のノルマは「優秀な学生を決められた数だけ集めること」です。このノルマをクリアーするために、「できるだけ多くの学生にエントリー(応募)してもらいたい」と考える企業は今でも少なくありません。要は、母集団となる「応募者の数」が多ければ多いほど優秀な学生を確保できる、と考えている訳です。

これは「応募者の数」が人事部の評価基準の一つになっていることにも原因があります。

たとえば、昨年度の採用活動で1万人の応募者を集めた企業があったとしましょう。そして、今年度はより積極的に採用活動を行い、2万人の応募者を集めたとします。この場合、応募者数が倍増したことになり、「人事部はよい仕事をした」と評価されるのが一般的です。

一方、昨年度は1万人の応募者が集まったのに、今年は5千人しか集まらなかった、となると、「人事部は何をやっているんだ!」と評価を下げられてしまう可能性があります。つまり、「応募者の数」は「採用活動の成否」を測るバロメーターになっているのです。

もちろん、「時代の変化」や「企業そのものの人気」も応募者数に大きな影響を与えます。採用活動を適切に進めていても、不祥事や業績不振により企業のイメージが悪化すると応募者数は激減します。

逆に、企業のイメージが良くなると、それに応じて応募者数も増加します。この中には、保険として応募してきた「余計なエントリー」も含まれていますが、それでも、たいていの企業は「応募者数が増えた!」と喜ぶのです。だって、応募の時点では「本当に入社する気があるのか?」なんて皆目、見当の付けようがありませんから。

採用活動の成否は「応募者の数」だけで決まるものではありません。しかし、そうはいっても、やはり人事部は「応募者の数」を気にしてしまうのです。これは多くの大企業が抱える悪しき習慣です。応募者の数が増えただけで、「今年度の採用活動は成功しそうだ」と考える企業(人事部)は意外と多いのです。

 

多過ぎる応募者にどう対応するのがベストなのか? 

通常、応募者の数が増えると、それだけ人事部の仕事も増えることになります。エントリーシートを見るだけでも大変な作業になりますし、全員を面接することなど到底できません。これについては、以前の記事で紹介したとおりです。

この問題を手軽に解決してくれるのが学歴フィルターです。むしろ、学歴フィルターの使用を前提にした場合、応募者数の増加はそれほど困った問題にはなりません。当初の予定よりボーダーラインを引き上げれば済むだけの話です。たとえば、例年なら偏差値57くらいをボーダーラインにしていたが、今年は偏差値59でも大丈夫だろう、と考える訳です。その結果、試験や面接を受けることなく振り落とされていく学生が増えるのです。

「学歴が高い学生」=「優秀な学生」という考えに基づくのであれば、このような採用活動を続けても問題はないでしょう。しかし、最近はそういう風潮が変わりつつあります。学歴以外の「何か」を重視したいと考える企業が増えてきています。でも、その「何か」が何なのかは明確ではありません。語学力なのかもしれませんし、熱意なのかもしれませんし、人柄なのかもしれません。

このように書くと、「新卒採用は分岐点を迎えている」と思う人もいるでしょう。しかし、これは今に始まった問題ではなく、昔から言われ続けてきた問題です。実際には「昔からずっと分岐点」なのです。採用活動をどのように変えていけばよいのか、明確なイメージを持っている人は多くありません。だから、この状況はしばらく続くと思われます。

最終決定権を持つ上層部や役員は、学歴社会の中で育ち、大学名の看板を背負って入社してきた世代です。その下で働く人事部の方々も、大学名を頼りに入社してきたサラリーマンでしかありません。だから、「採用活動に革命を起こして大失敗」なんて事態は避けたいと考える人が大半を占めます。危険を冒さず、従来どおりの採用活動を続けていくのが最も無難なやり方なのです。その一方で、「近頃の学生はチャレンジ精神が足りない」などとボヤいたりもします。これが人事部の実態です。

 

次回は、「なぜ中小企業には十分な応募が集まらないのか?」について詳しく解説します。

 

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