de empleo

就職活動における人事部と学生

学生も、人事部も、誰も得をしない新卒採用の余計な応募者

うつろな表情の女性

リクルートホールディングスの発表によると、2018年3月卒の大学生・大学院生の有効求人倍率は1.78倍になるそうです。この数字を素直に見ると、すべての大学生が就職しても、なお0.78人分の新卒採用枠が余る計算になります。いわゆる「売り手市場」といえますが、実際の就職活動は少しも楽ではありません。

そこで今回は、「なぜ必要以上に応募者数(エントリー数)が増えてしまうのか?」について考えていきたいと思います。

 

学生の不安な気持ちが必要以上に競争率を押し上げる

ここでは、仮に、有効求人倍率が1.0倍であったとして話を進めていきましょう。この場合、すべての学生が就職可能であり、また、すべての企業が採用予定数を確保できる計算になります。しかし、実際にはそう単純に事は運びません。というのも、たった1社にしか応募しない学生は極めて稀な存在だからです。

通常の就職活動では、気になる企業に対して何社も応募(エントリー)を行うのが一般的です。たとえば、1人の学生が平均5社に応募したとすると、応募者の総数は5倍に膨れ上がります。その結果、仮に有効求人倍率が1.0倍であったとしても、実際の競争率は5倍になってしまいます。決して楽な就職活動とはいえません。

しかも、平均5社という数字はかなり甘めの見積もりで、実際には10社以上、もしくは何十社にもエントリーする学生が少なくありません。「就活は大変だ」という先輩の話を聞いて不安になり、あまり行く気がない企業にも「念のため保険をかけて…」と応募している学生も多いでしょう。

どのような結果に終わるか予測できない就職活動。確かに、保険をかけたくなる気持ちはわかります。しかし、こういった余計な応募が就職活動を効率の悪いものにしているのです。たとえ何社に応募しようと、実際に就職できるのは1社だけです。

 

内定辞退の裏側で泣く学生

秋になれば、複数の企業から内定をもらえた「勝ち組」の学生と、1社も内定をもらえない「負け組」の学生に分かれてしまいます。運よく「勝ち組」になれたとしても、『本当はあの会社に行きたかったのに…』と複雑な気持ちを抱いているかもしれません。そして、内定を得た企業の中から1社を選び、残り数社の内定を辞退することになります。

その一方で、「負け組」になった学生は、「勝ち組」が内定を辞退した企業を本命にしていた可能性もあります。行く気もない企業に応募して内定を勝ち取った結果、そのアオリを受けた学生が自宅で泣いているのです

弱肉強食の競争社会といえばそれまでですが、「勝ち組」の人だって本当に勝ち組なのかはわかりません。もっと優秀な学生が「保険として受けた企業」が、自分の本命であった可能性もあります。複数の内定を得たとしても、より上の「勝ち組」のアオリを受けて本命を逃していれば、本当の意味での「勝ち組」とはいえないでしょう。

学生を採用する企業の側から見ても、内定辞退は深刻な問題です。もちろん、内定の辞退者が出ることは、ある程度は予想の範囲内です。それを見こして多めに内定者を出すことも珍しくありません。

しかし、「何人の学生が辞退するか」を正確に予測するのは不可能です。結果的に、採用予定数を大きく上回る学生が就職する事態になり、その対応に追われる企業もあるでしょう。逆に、予定していたほど内定者が残らず、二次募集に踏み切らなければいけない企業もあります。

いずれにしても、喜ばしい話は一つもありません。このように「保険としての応募」が円滑な就職活動、採用活動を妨げる要因となるケースは少なくありません、むしろ、現在の就活における最大の問題といえるかもしれません。

 

自由すぎる就職活動は考え物?

就職活動と同様に人生の一大イベントである大学受験の場合、受験できる大学に限りがあるのが一般的です。

国公立大学の場合、受験できるのは最大でも3校まで。私立なら好きなだけ受験できますが、それに応じて受験料も高くなります。仮に1校3万円としても10校に願書を出せば30万円の出費です。さらに合格発表後すぐに入学金を支払わなければならない、という制約もあります。受験にかかる費用を考えれば、何十もの大学を受験するというのは現実的な話ではありません。

一方、就職活動においては、何十社に応募しようと交通費以外の出費はかかりません。就職の際に受験料をとる企業なんて聞いたことがありません。しかも、インターネットからの応募が主流となった現在では、クリックひとつで応募を済ませることができます。エントリーシート(ES)の記述に手間がかかるといっても、他社のESをコピペして、ほんの少し手直して提出する学生が後を絶たないのが実情です。

このように、新卒の就職活動は極めて自由度が高いといえます。何十社に応募することも現実的に不可能ではありません。でも、そのような行動が回りまわって自分の首をしめる事態になるかもしれません。

その気もないのに応募した企業の筆記試験や面接は、そのまま「何となく参加する」のではなく、もう一度、よく考え直してみる必要があるでしょう。その結果、『やはり魅力を感じない』となれば、その時点で就活を中断するべきです。スケジュールに空きがあっても内定まで話を進めてはいけません。だって、誰も得をしないのですから。

 

次回は、「エントリー数の増加は企業にとって本当に喜ぶべき状況なのか?」について紹介していきます。 

 

  連載の目次