de empleo

就職活動における人事部と学生

応募者が多すぎても少なすぎても困る、人事部の切実な悩み

積み上げた石

前回の記事では、「できるだけ多くの学生にエントリーしてもらうこと」が企業(人事部)にとっての第1ステップになると紹介しました。しかし、エントリー数が多すぎると、それはそれで問題を引き起こします。逆に、エントリー数が少なすぎるために、思い通りに採用活動を進められない企業もあります。今回は、「採用予定人数」「エントリー数」(応募数)に関わる問題について紹介していきましょう。

 

応募者を全員見るのは不可能?

たとえば、100人の新卒採用を予定している会社に1万人のエントリーがあったとしましょう。その倍率は100倍にもなるため、かなり優秀な学生を確保できると期待されます。

では、現実問題として、1万枚ものエントリーシート(ES)を見るのに、どれくらいの時間を要するのでしょうか? 仮に1枚のESを読むのに3分の時間を要するとします。この場合、1時間に処理できる枚数は20枚(20人分)。1万人のESを読むには500時間もの時間を要することになります。毎日10時間ずつESを読み進めても計50日。土日を除くと、ESを読むだけで2カ月以上の月日が必要になります。

このような状況では採用活動は遅々として進みません。さらに、ESを読む以上は何らかの形で採点を行う必要があります。単にESを読み流すだけなら、1枚あたり3分という計算も不可能ではないでしょう。しかし、何十枚ものESを読み進めていくと、「誰が何を書いていたのか?」をすぐに忘れてしまいます。ESを選考基準の一つとして利用する以上、それぞれのESに点数を付けて、一覧表にまとめていく必要があります。となると、1時間に10枚(10人分)くらいが精一杯の作業量になるかもしれません。

もちろん、ESを読む人(人事部)が1人しかいないとは限りません。何人かで分担すれば、それだけ短時間でESの採点作業を終えられます。しかし、この場合は、ESを読む人によって採点の基準が異なることに注意しなければいけません。採点が甘い人もいれば、やたらと厳しい人もいるでしょう。これでは公平な選考など望めません。つまり、「誰がESを読むか」に応じて選考結果が変わってしまう可能性があるのです。

ESの採点基準を明確にルール化しておけば、ある程度は公平に選考を進められます。しかし、「志望動機」「学生時代に取り組んだこと」に採点基準を設けるといっても、相当に無理があることは容易に想像できます。結局のところ、「ESを読んだ人の主観」に頼る部分が大きく、公平な採点など望めないのです。

こういった理由から、提出されたエントリーシートをちゃんと読んでいない企業も沢山あります。特に、膨大な数のESが集まる人気企業、大企業になるほど、この傾向は強くなります。

 

「学歴フィルター」に頼らざるを得ない現状

では、どうやって学生を選考するのか? その最たる例が大学名だけを選考基準にする方法。いわゆる学歴フィルターというヤツです。もちろん、「ウチの会社には学歴フィルターがあります」と公表している企業はほとんどありません。本音を言えば、『せっかく応募してくれたのだから、エントリーシートくらいちゃんと読んであげたい』というのが、心ある人事部の胸中。しかし、現実問題として、それが不可能な場合は少なくないのです。

つまり、「苦労して書いたエントリーシートが全く読まれていない」というのも稀なケースとは言い切れません。このような話を聞くと、「真面目にエントリーシートを書いても意味がない」と思う学生もいるでしょう。ある意味、これは受け止めなければならない現実です。

しかし、だからといって、適当にESを書いてしまうと、後で痛い目を見る場合があります。書類選考時にESが読まれないとしても、ESには自分の思いを素直に記すのが基本。手を抜いても何も良いことはありません。これについては、後の記事で詳しく紹介します。

 

十分な応募者が集まらない中小企業

大企業や人気企業がエントリーシートの処理に追われる一方で、知名度のない中小企業は、「予定していたほど応募者が集まらない」という問題に悩まされるケースが多々あります。

たとえば、10人の新卒採用を予定している会社に30人の応募(ESの提出)があったとしましょう。単純に倍率を計算すると3.0倍の競争率です。「優秀な学生を選び放題」とまではいきませんが、ある程度は「この人に働いて欲しい」という学生を選抜できる、と思うかもしれません。

しかし、実際にはそうはいきません。ESや筆記試験などで半分の15人程度まで学生を絞り込み、さらに面接を行うとなると、最終段階で15人の中から10人を選ぶことになります。つまり、3人中2人は採用しなければならないことになり、かなり甘い面接になってしまいます。

もちろん、30人程度であれば全員を面接することも不可能ではありません。この場合、「3人の中から1人を採用する」という計算になりますが、これでも十分な数字とはいえません。というのも、知名度が十分でない会社は、内定を出しても学生に逃げられてしまうケースが多いからです。

就活をしている学生は、少なくとも数社、多い方だと何十社にもエントリーしているのが普通です。しかも、企業が欲しがるような人材(学生)は、他の会社からも内定をもらえる可能性が高い傾向があります。つまり、内定を出したからといって、自分の会社に就職してくれるとは限らないのです。

このような内定辞退も見込んで採用活動を行うとなると、採用予定数10人に対して、15~20人くらいに内定を出す必要があるかもしれません。もしかすると、それでも採用予定数の10人に届かない可能性もあります。となると、もう少し余裕をもって25人くらい・・・。このように弱気に考えていくと、応募者全員に内定を出すような事態になってしまいます。これでは選考も何もありません。


このように、「何人の学生が応募してくれるか?」という問題は、人気企業(大企業)知名度のない企業(中小企業)全く次元の異なる問題となります。多過ぎもせず、少な過ぎもしない。そんな、都合のよい話は、なかなか実現してくれないのです。

 

次回は「学歴フィルターの在り方」について詳しく紹介します。

 

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