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就職活動における人事部と学生

合同説明会は誰が何のために開催しているのか?

一人で歩く僧侶

前回の記事では、中小企業に応募が集まらない理由について紹介しました。今回は、主に中小企業が学生を集める場として活用される合同説明会(合同セミナー)の舞台裏を紹介していきます。
学生の間では、合同説明会に「参加すべき」という意見もあれば、「参加しても意味がない」という意見もあるようです。本当はどちらなのでしょう? その裏事情を知ることで、多少なりとも手掛かりを見つけられると思います。

 

主催者と出展企業の思惑

求人サイトからエントリーする方法とは別に、各地で開催される合同説明会(合同セミナー)に参加して就職活動を進めていく方法もあります。まだ合同説明会に参加した経験がない学生は、「一度は行ってみないと…」と考えている方もいるでしょう。

ところで、合同説明会は、誰が何のために開催しているのでしょうか? まずは合同説明会の基本的な仕組みから解説していきます。

通常、合同説明会を主催するのは、リクルートやマイナビなどの「求人情報を扱う会社」です。こういった主催者が参加企業を募集し、大きな会場で一斉に会社説明を行うのが合同説明会です。もちろん、合同説明会への出展(参画)は無料ではありません。合同説明会に出展したい企業は、主催者に出展料(参画料)を支払ってブースを借りるのが基本的な仕組みとなります。

たとえば、1ブースあたりの出展料が30万円であった場合、50社の参加企業を集めると、主催者は1,500万円の売上を得ることができます。ここから会場を借りる経費、学生を集めるための広告費(電車の中吊り広告など)を差し引いた残りが「主催者の利益」になります。要は「求人情報を扱う企業」にとって、合同説明会は一つのビジネス(利益を得る手段)になっているのです。

では、合同説明会に参加する企業は、なぜ何十万円もの出展料を支払うのでしょうか? その最大の理由は、求人サイトに会社情報を掲載しただけでは十分に学生を集められない場合があるからです。

前回の記事でも紹介したように、知名度の低い中小企業は、求人サイトに会社情報を掲載しても学生に見てもらえる保証はありません。このままでは十分な数の応募が集まらず、採用活動が失敗に終わってしまう可能性があります。そこで、高い出展料を払ってでも合同説明会に参加し、「とにかく学生の目に触れる機会を増やそう」と考えます。要は、「学生を集める手段の一つ」として合同説明会に出展しているのです。

求人サイトに掲載されている企業の数は、数千社~数万社という規模になります。一方、合同説明会に参加する企業は数十社、多くても200社程度しかありません。そこに何千人いや何万人もの学生が集まるとなれば、「自社にも多くのエントリーを集められるはず」という淡い期待の下、合同説明会に参加しているのです。

 

それでも学生が集まらない中小企業

実際に合同説明会に行ってみるとわかりますが、会場内が「人気のある企業」と「人気のない企業」に二極化するケースが少なくありません。名前が知られている企業(またはその子会社)には常に多くの学生が群がっているのに、無名な中小企業はいつも閑散としている、という感じです。

合同説明会では、各ブースで30分ほど会社説明が行われ、その後、学生にアンケートを記入してもらう、というパターンになるのが一般的です。そして、このパターンを1日中、何回も繰り返していきます。

「人気のある企業」は、次の会社説明が始まるのを遠巻きに待っている学生が沢山いるので、椅子取りゲームのようにアッいう間に席が埋まります。さらに、人が集まるブースは自然と注目を集めるため、次から次へと学生が群がってきます。

一方「人気のない企業」は、椅子に座っている学生が2~3人しかいない場合が多く、最悪の場合、学生が1人もいなくて人事部のオジサンだけが寂しそうに座っているブースもあります。このような状況を見た学生が「よし、この会社の話を聞いてみよう」となるのは極めて稀なケースといえるでしょう。よって、どんどん負のスパイラルに陥っていきます。

中には、「高い金を払って出展しているのに、ぜんぜん学生が集まらない!」と主催者に文句をいう人事部もいます。しかし、これは本末転倒な話。魅力のあるブースになっていないから学生が集まらないのです。主催者に責任がある訳ではありません。

そもそも、人事部のオジサンが1人で合同説明会に来ていること自体が間違いです。若い社員を何人か一緒に連れてきて、積極的に学生に声をかけていかないと、多くの学生を集めることはできません。知名度がなく、オジサンがポツンと1人で座っているブースに足を運ぶ学生は少ないのです。会場に多くの学生がいるからといって、必ずしも多くの学生を集められるとは限りません。

 

通路をぶらぶらと歩く学生

では、合同説明会を訪れた学生はどのように過ごしているのでしょうか? 最も多く見られるのは、「人気のある企業」の話を2~3社ほど聞き、「もう疲れたし、そろそろ帰ろうかな」と通路をぶらぶら歩いている学生です。このような過ごし方は、最も効率の悪い就職活動といえます。

これでは、塾に通っただけで勉強した気になっている中学生と同じです。合同説明会に参加することで「自分は就職活動を頑張っている」と言い聞かせているようなものです。実際に得るモノが何もなければ、単なる時間の無駄でしかありません。「人気のある企業」だけを訪問しても、就職活動は何も進展しません。その理由については、次回の記事で詳しく解説します。

合同説明会に行く以上は、なるべく多くの企業の話を聞き、何かしらの成果を得て帰るのが基本です。もしかしたら、無名な中小企業の中に「魅力的な企業」が見つかるかもしれません。そうでなかったとしても、なるべく近い距離で人事部の方と対話することで「場慣れ」という経験を得ることができます。多くの学生が群がるブースに行き、椅子に座って話を聞いてるだけでは、たいした経験を得られません。

 

合同説明会を意味のあるものにするために

この記事の冒頭で「合同説明会は一つのビジネスである」と説明しました。主催者は合同説明会を開催することで利益を得ているし、中小企業は学生を集める手段として合同説明会を利用している。

このように書くと、合同説明会に悪い印象を持つかもしれません。でも、これは決して悪いことではありません。主催者は、中小企業の「何とかして学生を集めたい」という需要に応えているだけです。そして、それを仕事として遂行する以上、多少の利益を得るのは当然です。だって企業は利益を得るために活動しているのですから。

学生が集まらない中小企業も、必ずしも「魅力のない企業」とは限りません。知名度がないから学生が集まらないだけの話です。客引き(学生集め)が苦手なため閑散としていても、企業そのものには魅力があるかもしれません。

ひとくちに人事部といっても色々な人がいます。社交的な人もいれば、そうでない人もいます。ブースを飾るのが得意な人もいれば、そうでない人もいます。見た目の雰囲気だけで「企業そのもの」を判断してしまうのは危険です。業務内容に少しでも興味がある企業は、積極的に話を聞いてみる。合同説明会には、このような姿勢で参加するのが基本です。もしも、その気がないのなら、合同説明会なんて行っても意味がありません。

 

次回は、合同説明会に出展する大企業、人気企業の思惑について紹介します。

 

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