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就職活動における人事部と学生

なぜ中小企業には十分な応募が集まらないのか?

考える男性

前回の記事では、「エントリー数の増加は企業にとって本当に喜ぶべき状況なのか?」について紹介しました。しかし、これは大企業や人気企業だけが抱える問題といえます。
中小企業の場合は、「とにかくエントリー数を集めないと話にならない」という状況になるケースが少なくありません。そこで今回は、「なぜ中小企業には十分な応募が集まらないのか?」について考察していきます。

 

知らない企業には応募のしようがない

たいていの場合、学生が「就職したい!」と想う企業は大企業または有名企業です。希望する業界の中で「知名度の高い会社」を第1希望にする学生が多いのが実情です。逆に、「この会社にだけは行きたくない」という企業もあります。仕事がきつく、休みがとれない、いわゆるブラック企業と噂されている企業も、そのほとんどが大企業(有名企業)です。

一方、中小企業はどうかというと、「就職したい」と「就職したくない」のどちらにも分類されない企業が大半を占めます。だって、社名はおろか、その存在すら知らない場合が多いのですから。もちろん、存在すら知らない会社に応募する学生はいません。当然といえば、当然の話です。

リクルートホールディングスが発表した資料によると、2018年3月卒の有効求人倍率は、

 ・従業員5,000人以上の大企業が0.39倍
 ・従業員300人未満の中小企業が6.45倍

となり、その格差は10倍以上になります。この数字を素直に受け取ると、大企業に就職できる学生は約3人に1人という計算になります。その一方で、中小企業は採用予定数の1/6~1/7の学生しか確保できないことになります。実際には、大企業から内定を得られず、中小企業に回ってくる学生がいるため多少は緩和されますが、それでも中小企業はかなりの苦戦を強いられます。

 

求人情報を出しても学生に届くとは限らない

では、中小企業はどうやって学生に応募してもらうのでしょうか? そのためには、まず自社の存在を知ってもらわなければいけません。リクナビやマイナビなどの求人サイトに会社情報を掲載し、何とか学生にアピールしようとするのが採用活動の第一歩です。

とはいえ、これは無料ではありません。求人サイトの多くは「求人という広告を掲載しているサイト」であり、会社情報を載せるのに何十万円もの掲載料を支払う必要があります。

しかも、情報を掲載したからといって、必ずしも学生の目にとまる保証はありません。求人サイトには何千社、何万社という数の会社情報が掲載されています。このため、業種や本社所在地などで絞り込み、2ページ目以降も丹念にチェックしていって初めて、自社の情報が見つかる、となるのが普通です。つまり、サイト内を隅々まで見て回る学生にしか情報を届けられないのです。

より目立つ位置に会社情報を掲載してもらう方法もありますが、そのためには高額なオプション料金を支払わなければいけません。これは、予算の少ない中小企業にとって、そうそう簡単に手を出せるものではありません。会社情報を掲載してもほとんど存在を認識してもらえず、時間だけが過ぎ去っていく中小企業は沢山あります。

 

記事を書いているのは企業ではなくライター

運よく学生が会社情報を見てくれたとしても、エントリーしてもらえなければ意味がありません。会社情報を見て特に魅力を感じなかった学生は、そのまま何もせずに別のページへ移動してしまうでしょう。

学生にエントリーしてもらうには、自社の魅力を上手に伝える文章や写真を掲載する必要があります。とはいえ、求人サイトに掲載される情報を、企業が自ら執筆するケースはほとんどありません。求人サイトに会社情報の掲載を依頼すると、取材という形でライターとカメラマンが派遣され、ライターが会社紹介の記事を書き、カメラマンが写真を撮る、という流れになるのが一般的です。

企業の魅力を伝えるのが上手なライターに当たればラッキーですが、そうでなかった場合は、せっかく高い掲載料を払っても効果のある会社情報(求人広告)にはならず、学生からのエントリーも集まりません。

それ以前に「会社そのものに特筆すべき魅力があるか」という問題もあります。「シェアNo.1」とか、「給料・ボーナスが高い」とか、「1ヵ月の連続休暇がある」などの明確な魅力があれば話は別ですが、そうでない普通の企業は、「風通しのよい社風」とか、「社員を大切にする」といった抽象的な内容になってしまう場合が多いといえます。

会社情報に掲載される文章のうち「信頼性が高い」といえるのは、事業内容くらいしかありません。社風や教育体制などは、ライターの腕前(取材の対応)次第で良くも悪くもなります。さすがに嘘を書くことはできませんが、「社員同士の仲がよい」とか、「手厚い教育体制」といった話は、その気になればどうとでも書ける内容です。取材をしたライター自身も、「本当に仲がよいのか」や「本当に教育体制が充実しているのか」までを見抜くことはできません。取材時に聞いた内容をそのまま書くしかないのです。

また、文章と一緒に掲載される写真も大きな影響力を与えます。笑顔でほほ笑む社員の中に美人やイケメンがいれば、「こんな先輩がいるのなら」と応募する学生もいるでしょう。若いのですから、美人やイケメンが気になるのは当然です。逆に、「社長の顔が気に入らない」という理由でエントリーを辞める学生もいるでしょう。

 

掲載されている記事から真実を見抜くのは難しい

とはいえ、こういった曖昧な雰囲気だけを頼りに応募先を検討するのは考え物です。本当は社内がギスギスしているのに、写真撮影のときだけ(カメラマンの指示で)楽しそうにしている可能性も十分にあり得ます。というか、会社を紹介する写真に「つまらなそうにしている顔」を載せる企業はなく、多少は無理してでも楽しそうにするのが普通です。社長の顔写真だって、社長の人柄をそのまま表現しているとは限りません。

記事を読む学生は、文章や写真の真意を読み取れるだけの能力を備えていないのが一般的です。「なんとなく・・・」といったイメージでエントリーする、しないを決めている学生も多いでしょう。記事から「会社の真の姿」を見極められればよいのですが、おそらく、それは不可能です。

では、どうすればよいのか? これに対する明確な答えは、残念ながらありません。あえて言うなら「事業内容が気になる企業には、とりあえず応募してみること」です。中小企業の場合、「応募者数が多すぎて困る」というケースは滅多にありません。なので、丁寧に対応してもらえると思います。

状況によっては、学生に興味を持った中小企業が、向こうからアプローチしてくる可能性もあります。中小企業の本当の姿は、人事部や現役の社員に会い、社内を見学してみないと把握できません

グローバル化が進み、社会の変化が激しくなった現在では、大企業だからといって安心できるとは限りません。名前が知られている人気企業でも、中小企業並みの給料しか貰えないケースは沢山あります。ましてや、10年後、20年後の状況がどうなっているかなんて誰も予測できません。これは大企業であっても同じです。図体のでかい大企業は、リストラにより難局を乗り切るだけの話です。大企業に就職できたとしても、貴方が生き残れるかは全く別の問題なのです。

 

次回は、「合同説明会は誰が何のために開催しているのか?」について紹介していきます。

 

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